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3.2.2 電子スキャン方式前方探査ソーナの開発
従来、前方探査ソーナは、指向角の小さいソーナヘッドをモータなどを利用して水中で機械的に左右に振る方式がとられている。この方式では、ソーナヘッドの機械的な角度と物体からの音波の反射を検出して、障害物などの位置を計測してきた。信頼性の向上やスキャンの高速化を図るため、水中音響機器メー力一では機械方式に変わり、電子的にソーナヘッドの指向角を変化させる電子スキャン方式の開発が進められている。同社においても、電子スキャン方式の前方探査ソーナシステムの開発が行われていた。同社が開発を進めているSM2000型電子スキャン方式ソーナシステムは、80個のトランスデューサを持つソーナヘッドと、耐圧容器に組み込まれた電子機器で構成される。周波数は200kHzで、ソーナヘッドから5mから250mまでの距離の探査ができる。各トランスデューサは、受波した音波を電気信号に変換し、耐圧容器内の電子機器ではアナログ信号を80チャンネルのデジタル信号に変換する。各トランスデューサで受波した音波にディレイなどの信号処理を施し、狭い音響ビームを作るので、機械的スキャンのような機構部がないことやスキャン速度が速いなどの利点がある。船上装置はパーソナルコンピュータ(IBM PC/AT互換機種)を利用したシステムで、水中部からの信号を演算処理して画面表示する。表計算プログラムとして利用されているエクセルなどのウインドウズ上で操作するアプリケーションソフトウェアと同じように、マウスを利用して、ソーナのレンジや送信間隔の設定や画面の表示色を変更することができる。
工場内では、80個のトランスデューサを組み込むソーナヘッドの製造装置と、開発者から水中部の電子回路と船上部のソフトウェアの説明を受けた。写真11は、同社が開発中の電子スキャン方式ソーナヘツド製作用治具である。中央のドーナツ状くぼみの手前に置かれた梯子状の薄板がトランスデューサとのことであった。、説明によると、水中の電子機器では、各トランスデューサの振幅と位相特性が一致するように電子回路を、調整した上で、アナログ信号をデジタルに変換し船上部に送信していること、演算はすべて船上で行っていること、水中から船上への信号伝送にはRS422規格の高速シリアル信号回線を使っているが、ケーブルを延長し数百メートルの通信を行えるように改良を行っている、とのことであった。実験室は、製作中のソーナヘッドを試験水槽に取り付け、約2メートル程の距離にある小径パイプをターゲットに試験を行っていた。

 

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写真11 ソーナヘッドを製作する治具

 

 

 

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